傷を負ってこそ、つかめるものがある。 マタハラ防止団体設立から2年で法改正を実現した「社会の変革屋さん」

傷を負ってこそ、つかめるものがある。
マタハラ防止団体設立から2年で法改正を実現した「社会の変革屋さん」

株式会社natural rights 代表取締役、NPO法人マタハラNet創設者
小酒部 さやかさんSayaka Osakabe
女性キャリアモデル小酒部さん
わたしの強み
「嫌われる勇気」をもっていること
このしごとに必要な力は?
共感力、巻き込み力、発信力
年齢
40歳
家族
夫、子ども一人
株式会社natural rights

「マタハラ」が新語・流行語大賞のトップ10になるまで

女性キャリアモデル小酒部さん写真

国際勇気ある女性賞受賞

マタハラNetは立ち上げから一年もたたないうちに広く知られるようになり、その年の冬にはマタハラの言葉がユーキャン新語・流行語大賞トップ10に入りました。
団体が短期間で知られるようになったのは、時代の流れにちょうど合っていたこと、それからSNSをうまく活用できたことが大きな理由だと思います。
2013年に連合が働く女性の4人に一人がマタハラに合っているという結果を公表し、メディアがマタハラという言葉を使いだしていました。言葉、ショートワードがあるというのはすごく大事なことです。バラバラだった被害者がつながって、問題が「見える化」するんですね。
私自身、二度目の流産の時に、このマタハラという言葉を夫が電子記事で見つけてくれて、まさに私のことだ、自分が受けたのはマタハラだったんだ、とはじめて自分がされたことを認識しました。
それから2014年に安倍内閣がウーマノミクスを掲げたことも、大きかったです。NHKのテレビ番組に出演したあと、まず、海外メディアが「日本政府は女性活躍を推進するって言ってるけど、マタハラ問題があるじゃないか」と取材にきました。それから、国内メディアからも一斉に取材を受けました。比較的短い時間でメディアに注目されるようになったことは、自分のやっていることは間違っていないという確信にもつながりましたね。
翌年3月にはアメリカ国務省から日本で初めて「国際勇気ある女性」賞を受賞しました。海外からの注目は非常に高かったです。
さらにもう一つ、2014年10月には最高裁まで裁判が続いた広島のマタハラ裁判もあります。広島市の病院で働く理学療法士の女性が妊娠をきっかけに降格させられたのは不当だとしていた裁判で、結果は女性側の勝訴となったのですが、女性はメディアに出たくなかった。そこで、判決が出た翌日にマタハラNetが記者会見の対応をしました。
力のない小さい団体が、まだ社会化されていない課題を表に出していくには、戦略を考えることが必要です。
当時、マタハラNetは少人数で、あれこれ活動することは難しかった。だから、より効果的に効率的に、強いインパクトを社会に与えられるように活動することを意識してやっていました。
「この時期にこういうイベントをやると注目度が高いですよ」と、メディア関係の方々や支援してくださる方々がアドバイスしてくれるので、タイミングを計りながら、きっちりそれをやりました。私が広告代理店で働いていた時の経験も役立っているかもしれません。

共感は最大の武器、SNSでサイレントマジョリティーに呼びかける

それからSNSのフル活用ですね。今はFacebook、Twitterなど個人が発信できるツールがたくさんある。これを活用しない手はありません。
私がそれを痛感したのはChang.orgという署名キャンペーンをした時。全然面識のない小島慶子さんや松尾貴史さんなどの著名人の方が、マタハラNetの署名キャンペーンをSNSでシェアしてくれたんです。著名な方の影響力で「いいね!」が爆発的に増えて、署名も1万2000人に達しました。
サイレントマジョリティーに呼びかけるんです。声には出さないけど、マタハラに怒っていて、防止できるように法改正すべきと思っている人たちはたくさんいる。いいね!いいね! で、どんどん拡大していきます。
そういう人たちの共感をかたちにして見せていく。地道に発信し続けていれば、共感してくれる人は必ずいるし、共感を呼べればすごい武器になるんです。

メインストリームに乗って政策提言、法改正に導く

女性キャリアモデル小酒部さん写真

安倍首相、ケネディ前駐日米国大使らと

マタハラNetを立ち上げた当初から、ただ声高に「反対」を叫ぶのではなく、実効性のあるところまでやると決めていました。そのためには、政府の有識者会議の委員のような、影響力、発言力のあるポジションまでいかなければなりません。だから、メインストリームに乗ると決めていました。
こうした方向性をもてたのは、認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんやNPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也さんなどの社会起業家と呼ばれる方々にお会いできたことが、大きかったです。
ツテもなく、初対面だったのですが、社会的な課題を解決していくためのさまざまなノウハウを教えてもらいました。たとえば、政策提言のやり方もその一つです。
アドボカシー活動をして、2015年の育児介護休業法の改正で、非正規で働いている女性の育休取得要件を緩和するように求め、実際に通すことができました。また、2017年には男女雇用機会均等法で雇用主のマタハラ防止が義務づけられました。マタハラNetを立ち上げて2~3年、法律の改正、施行が行われました。

ミッションを実現するために、立場を超えて

2016年11月、NPO法人マタハラNetを離脱しました。4年間の不妊治療を経て妊娠して、組織運営が難しくなってしまったことが一つ。それから、法改正を実現させた後、これからは被害者と企業を結ぶ架け橋になりたいと思ったこともあります。
マタハラNetは、被害者の団体です。企業側からは、対立的な立場の人と目されて、「うちにマタハラはありません!」と扉を閉められてしまうことがありました。
私のミッションは、世の中からマタハラをなくすこと。現実を、着実に変えていきたいんです。だから、今までは被害者に寄り添ってきたけれど、今度は企業の側でマタハラを起こさない環境づくりのお手伝いがしたいと思いました。それで設立したのが、株式会社natural rightsです。
たとえば、小さな企業の場合、働いている女性が妊娠して、別の部署へ配置換えの希望があってもポストがなく、どう対処すればいいか分からず困っているケースがあります。だけど、同じような企業で、マタハラなんて起こさずに回しているところもある。成功事例を集めれば、企業にも従業員にも有益な情報を提供できると思って、「ずっと働ける会社」(花伝社、2016年)という本を出版しました。
ジャーナリストとして、企業の活動をどんどん取材して、企業に役に立つ情報を発信していきたいと思っています。企業をサポートするような制度作りにも関われたらいいですね。
それから私も含めて、雇用保険に入っていないフリーランスで働く女性や女性経営者も現在の法律では抜け落ちてしまっています。まだまだ問題は山積みですが、一歩一歩、着実に取り組んでいきたいです。

マルチに活動、多面的に働く「社会の変革屋さん」

女性キャリアモデル小酒部さん写真

3月に第一子を出産。これからは絵本の出版もしたい

私の根っこは「社会の変革屋さん」です。そして、発信者としていろいろなドアを持っていたい。起業して会社の代表をしているけれど、ジャーナリストのような活動をしていたり、研修講師をしていたり、絵本作家をしていたり。どれもこれもやりたいです。
マルチに活動して共感窓口をいくつももっていれば、人が入って来やすいでしょう? 「社会の変革屋さん」は、社会を変えていくために、いろんな人から共感してもらったり見てもらったりする必要がありますから。
いくつものドアを持っていて、このドアは無理だけど、このドアには共感できるというスタンスで、入ってきてくれる人を増やすというあり方が、私には合っていると思います。
副業、パラレルキャリアという働き方も最近は増えてきましたよね。私もそうありたいし、多面的でいたい。共感して「いいね!」を押してくれる人を一人でも増やすために、いろいろなところで共感してもらえるようにしておくのが一番お得かなと思っています。

小酒部さんからのメッセージ

私は、自分のなかに一本、曲げられないものがあって、自分のなかの「正しさ」を信じて生きてきました。そうすると、どうしても人とぶつかったり、バッシングされたりします。
そういう時、嫌われる勇気をもっていることが、私の強みです。でも、最初から強かったわけではありません。活動していくことで、どんどん成長して強くなったんです。
ひどいバッシングを受けて、それに耐えられるかどうか。支持してくれる人たちがいたとか、法改正ができたとか、私にはそういう成功体験があったので、耐えることができました。意味があって嫌われるのであれば、耐えられます。
何かを成し遂げるときに、無傷でなんていられません。傷があるからこそ共感してくれる人たちもいる。これだけバッシングされてもまだやっている、だったら助けてあげたいと思うじゃないですか。傷を負ってこそ、つかめるものがあるんです。
(2017年4月インタビュー)
女性キャリアモデル小酒部さん写真
株式会社natural rights 代表取締役、NPO法人マタハラNet創設者
小酒部 さやかさん

Life & Career History

年表_小酒部様

 

ページ:
1

2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る