しごとと介護を両立するために 介護の各種サービスを知る

介護の各種サービスを知る

今回は、介護保険と自治体独自の介護サービスを中心に、介護の専門家によるサービスを知ることを目的にお伝えいたします。

介護保険とは

少子高齢化を見据え、2000年に介護保険法が施行されました。それまでは家族が介護を行い、病気で入院すればその後治療の必要がなくなっても介護を受けるために長期間入院することが常態となっていました。しかし子どもの数が減り、介護を社会全体で支えていく仕組みが必要になったのです。つまり介護保険法は、家族以外の人、たとえばケアマネジャー、保健師、介護事業に関わる人(ホームヘルパーや施設職員等)の様な「介護の専門家」や地域住民の手を借りながら、介護をすることを意図しています。
また、できるだけ住み慣れた環境(地域、人間関係等)の中で生活を送ることを重視していますので、基本的には在宅介護を中心にサービスが成り立っています。
しかし介護される人も、その家族も、家族以外の人が自宅に入って、身体や日常生活上の援助をすることに対して意識的な抵抗もあり、仕組みはできていても十分活用されていません。また介護業界の労働環境により、介護に従事する人の定着や育成という面でも充実していないという問題も解決していくべき事項となっています。

介護保険の全体像

介護保険のサービスを利用することができるのは、65歳以上の人で要支援・要介護の認定を受けた人です。40歳以上の人は、指定されている16の特定疾病による要支援・要介護状態であれば、サービスの利用ができます。
介護保険のサービスは、ホームヘルパーによる訪問介護や日中だけ施設に通ってサービスを受ける通所サービスなど、自宅を中心として利用する「居宅介護サービス」と、施設に入所して利用する「施設サービス」があります。また自治体ごとに実施している「地域密着型サービス」として、夜間対応型訪問介護、認知症対応通所介護などもあります。

介護保険のサービス利用の流れ

次に利用までの簡単な流れをご紹介します(図表1参照)。

①利用者の住む市区町村の介護保険の窓口に申し込みをします。
②調査員による訪問調査を受け、日常生活の動作確認や、ヒアリングが行われます。
③②の調査結果と、かかりつけ医の意見書をもとに認定会議が行われます。
④認定結果が通知されます。
⑤要介護と認定された場合には、ケアマネジャーと契約し、ケアプランを作成します。
⑥ケアプランに沿って、サービスの提供を受けます。
ここで留意しておきたい点としては、①の介護保険の認定申し込みをしてから、④認定結果が通知されるまでは約1ヵ月かかるということです。したがって、利用しようと決めたら早めに申し込むことがポイントです。

自治体独自のサービスを利用する

国が行っている介護保険でのサービスの他、自治体ごとに介護に関わる各種サービスが用意されています。

自治体の介護サービス例

緊急一時入所サービス在宅訪問歯科保健診療家事、介護援助緊急通報器貸出し
給食の配達 
電話訪問日常生活用具購入補助 
リフォーム補助 
徘徊検索 
はり、きゅう、マッサージ券配布紙おむつ支給寝具消毒乾燥 
出張理美容話し相手成年後見制度利用支援健康教室 
賃貸支援 
介護タクシー券配布 
家族介護慰労金支給火災報知器設置支援

これらのサービスの内容や利用要件は自治体ごとに違いますので、まずは利用者の住む自治体のホームページなどで情報を収集すると良いでしょう。たとえば、高齢になると足腰が弱くなり、布団の上げ下ろしや天日干しが困難になりますが、布団の丸洗い乾燥サービスの利用ができれば、清潔な寝具の確保ができます。またシルバー人材センターを通じて庭掃除等をお願いすることもできます。これらは1回1000円程度の利用料ですし、介護保険で要介護と認定されていなくても利用できるサービスが意外と多いので、ぜひ調べてみてください。

介護の相談窓口

自治体ごとに介護の相談内容によって、窓口が別れています。横浜市の例を示しましたので参考になさってください。

横浜市に住む親の介護の場合の主な相談先

相談先できることその他・連絡先など
横浜市◯◯区役所 高齢・障害支援課介護保険の各種申請窓口、医療費控除の問い合わせなど
各地域ケアプラザ保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置され、介護全般の相談ができる
たとえば、
○介護予防ケアに関する相談・紹介 ○高齢者虐待対応 ○成年後見人の紹介 ○自治体のサービスの紹介、申請書受付 ○介護保険申請窓口 ○自治体の福祉に関するサービスの紹介 ○家族介護の会、認知症家族介護の会の開催、紹介など。
横浜市内に複数箇所あり
横浜市社会福祉協議会シルバー人材センターの利用、ボランティア情報、金銭管理の相談など横浜市中区桜木町1-1 横浜市健康福祉総合センター9階
TEL045-201-2009
高齢者施設・住まいの相談センター特別養護老人施設、介護老人保健施設、グループホームに関する情報提供と相談港南区上大岡西1-6-1ゆめおおおかオフィスタワー10階
TEL045-342-8866
認知症カフェ認知症の人、認知症の家族を介護している人が相談したり、おしゃべりする場。お茶の提供あり横浜市内に複数箇所あり

特に地域包括支援センターでは介護に関するよろず相談所として介護サービス情報の提供、介護保険の申請窓口、介護を行っている家族の悩み相談、介護予防の講座の開催など幅広く行っていて、介護をするうえで心強い相談窓口です。ちなみに、地域包括支援センターは地域によってさまざまな親しみやすい名称を用いていることがあり、横浜市の場合は、「地域ケアプラザ」という名称になっています。

民間のサービスを利用する

湯沸かしポットを利用すると登録先にメール通知が届くサービスはご存知の方が多いと思いますが、同様に見守り機能のあるサービスを民間のさまざまな会社が提供しています。たとえばブザーを首から下げておき、緊急時に押すと登録先に通知したり、乳酸菌飲料やお弁当の配達時に声掛けを行ったり、郵便局員が定期的に訪問して様子を報告するなどさまざまなものがあります。これらはインターネットで情報収集することが十分可能です。

遠距離介護になっても諦めない

一般的には片道2時間を超える距離の介護を「遠距離介護」と呼びます。親の介護が必要になった時に親を自分の近くに呼び寄せる事も考えられますが、長年慣れ親しんできた地域を離れて新しい土地で暮らしていくことは高齢者にとって容易ではなく、良かれと思って決断したことを悔やんでいるケースも耳にします。まずは介護保険のサービスを中心に、必要に応じて自治体や民間のサービスをうまく組み合わせることで、親が地域で暮らしていけないかを考えてみることが重要です。さまざまなサービスを上手に組み合わせ、それに関わるケアマネジャーやホームヘルパー、かかりつけ医、ご近所の方等との連携により遠距離介護をしている人は少なくありません。事実、筆者の知人にも東京にいながら北海道に住む両親の介護を10年間にわたって行っている人、親を一人日本に残して海外赴任している人などがいます。
ちなみに遠距離介護では帰省費用の負担が大きいのですが、主要航空会社では、要介護認定が下り、事前登録しておくと、介護で帰省する際におよそ35%の介護割引が利用できるというサービスを設けています。

教えてくれた人・・・

特定社会保険労務士 /キャリア・コンサルティング技能士2級
大学卒業後、化粧品会社、専門商社にて企画業務に従事。平成10年に社会保険労務士試験合格後は、厚生労働省東京労働局にて次世代法を担当。専門領域は、育児・介護の両立支援、テレワーク導入、多様な働き方、女性活躍等の分野。平成22年に独立開業し、現在は顧問先の労務管理、手続き業務のほか執筆、講演、コンサルティングを多く手がける。
主な著書は「仕事と介護両立ハンドブック」(生産性情報センター)、「さあ、育休後からはじめよう」共著(労働調査会)、「ダイバーシティマネジメントの実践」共著(労働新聞社)。

グラース社労士事務所代表 新田 香織(にった・かおり)

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